静岡県御前崎市佐倉の紹介


 御前崎市にお住まいのMさんから、御前崎市佐倉の紹介をしてくれます。全国にある佐倉と交流ができたらすばらしいと思います。


 2007年11月27日
 静岡県の地図を見ると目立つのが、真ん中に駿河湾、右手に伊豆半島。他県の方にはそのように目に映るのではないでしょうか。
 私たちの住む御前崎市佐倉は、駿河湾を挟んで、伊豆半島の対岸。湾の入り口に小さな突起物のような岬があります。これが御前崎です。
 ここには千葉県銚子の犬吠崎灯台にも負けない白亜の灯台が建っています。この御前崎から地図上で左に目をやると、浜名湖まで緩やかな海岸線が続きます。
 この海岸を遠州灘海岸といい、黒潮の流れが速く古来 船旅の難所といわれていたといいます。
 天竜川は有名かと思いますが、その昔「暴れん坊」と呼ばれ、洪水で農民を苦しめた大きな河です。この天竜川の濁流が流しだした大量の土砂が、遠州灘の荒波で洗われ、西風に追われて海岸に堆積し、白く美しい砂浜を形成したということです。 浜松の中田島砂丘、浜岡の浜岡砂丘という大きな砂丘地帯ができたのも、天竜川と遠州灘そして遠州のからっ風というこの地方特有の自然の力によるものです。
 広大な砂浜を現在のように農地に替えるためにはひとつのドラマがあるのですが、今は白砂青松の風光明媚な地形です。
 御前崎市佐倉は、御前崎灯台から遠州灘海岸を10キロほど走ったところにあります。 中部電力の「浜岡原子力発電所」をご存知の方がいらっしゃれば話は早いのですが、そこが御前崎市佐倉です。
 佐倉は昭和30年の町村合併以前の旧村名で、古くは城東郡佐倉村と呼ばれていたようです。その後小笠郡浜岡町佐倉となり、現在は平成の合併を経て御前崎市佐倉となっています。  御前崎市は人口36,000余りの静岡県で最も小さな市です。
 我が佐倉はその小さな市のさらに小さな一地域の呼称で、人口も5,000人程度、集落といっていいほどの小規模な地区です。 「佐倉」の地名の由来は、伝説がいくつかありますが、「桜ヶ池」という池の存在が無視できないようです。「桜ヶ池」は「砂丘堰き止め湖」といわれ、先に述べましたとおり、海から堆積した砂丘によって堰き止められてできたものですが、小高い丘の上に、日照りでも枯れもせず常に満々と水を湛える池を不思議として、古代から何らかの信仰を集めていたものと考えられています。
 この「桜」の名がその周辺の地名となったというのが一般に信じられているようです。事実この周辺の古文書には「桜村」と記されていることがあります。
 池は三方をうっそうとした原生林に囲まれ、池畔に「正一位 桜ヶ池池宮神社」の拝殿が建っています。 この神社の社家を「佐倉氏」といいます。もちろん地名の「佐倉」を氏とした、古代から累々この神社を守り、宮司を続けてきた家系ということです。
 私たち佐倉の住民はほとんどがこの神社の氏子です。 先に述べましたように、御前崎市佐倉は遠州灘海岸に面し、天竜川からの土砂が堆積した地形ですので、砂地というより砂浜の上に住んでいることになります。
 砂地は耕すことは簡単ですが水持ちが悪く、やせている(肥料分がない)ため農作物が育ちません。砂浜に植物を植えても育たないのと同じです。 往時、お百姓さんは苦労したことだろうと思います。
 最近では昔ほどのことはありませんが、冬の風物詩ともいえる、「砂役」(スカエキ)、現在では「砂防」という仕事があります。
 遠州地方は冬になると「遠州のからっ風」とよばれる乾燥した強い西風が毎日吹きます。 風速10mほどの強風です。私は中学生のころ通学に自転車を利用していましたが、この強風にあおられて道路から田んぼに落ちたことがあります。 風は強いばかりでなく、砂を舞い上げ東へ東へと運びます。
 昔は、この砂に一晩で農地が埋まってしまって作物が取れなくなることもあったようです。
 このため、木の枝の束「粗朶」(ソダ)や竹で編んだ簾状の「竹簾」(タケス)を立てて砂よけをします。風と砂を堰き止め、松の木を植える。松の木が育って風除けになる。これを繰り返して耕作可能な農地を増やしていく。これが「砂防」と言われる作業です。
今では押さえ込みをしなければならない「砂山」(スカヤマ)がなくなりましたので、作業をあまりみなくなりました。もっぱら海岸の侵食防止のための「砂防」のようです。  また、畑には「稲わら」を使った風除けを施して作物を守らなければなりませんでした。 このような土地では作付けできる農作物は限られてしまいます。
 私の子どものころは、「落花生」や「さつまいも」を作っている農家が多かったと思います。 「さつまいも」はどなたでもご存知の作物ですが、砂地の肥料分のない土地でも育ちます。「さつまいも」は蒸かして食する以外に「切干」(キリボシ)の原料でもあります。
「切干」はさつまいもを切って干したもので、露天で「からっ風」にさらして生産します。
 風土は御地、千葉県の海岸付近と似ているのではないでしょうか。 少し内陸に入った土地では「早生みかん」「梅」「茶」「なし」などの果樹もありました。
「静岡メロン」は有名だと思うのですが。
 遠州地方は施設園芸の温室メロンが盛んです。もっとも最近の石油の高騰のため温室内の冬の暖房費がかかりすぎて廃業する農家がいますが。 関東方面で高値で取引されているメロンには浜岡産、佐倉産も含まれているはずです。



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